・テント泊地選定能力
長期の自転車旅行を続ける上で重要なのが睡眠を十分にとることで、睡眠が十分に取れるかどうかが自転車旅行の成否を左右します。十分な睡眠が取れないと寝不足になり、前に述べたようにブラック企業に勤めてるかのような状態になり、旅が困難を極めます。体調不良のときも旅を中止するか、或いは大幅にやり方を変えるべきかの判断もこの睡眠がとれてるかどうかが判断基準になります。
睡眠は主に宿とテント泊でとりますが、宿のうちベッドの質や清潔度、虫等の問題がある場合もあります。その場合、自分で睡眠環境を整えないといけないため、広い意味でアウトドア活動と捉え割り切って対応し、宿内にテントを張る場合もあります。
次にテント泊ですが、テント泊で必要になる要素は・テント泊地選定と・自分に合った寝具の選定があります。寝具については前にブログで取り上げたのでそれらを参照下さい(マット、寝袋、テント、ついでにペットボトルシャワーも参照下さい)。
テント泊地選定能力は寝る場所を確保する上で非常に重要な能力になり、これが上手くできないと暗い道を走り続けたり、安眠に適さない場所を選んだり、地元の方を不安にしたり、職務質問を受けたりすることになります。暗い道を走ってると、事件・事故に巻き込まれる危険性もあります。
そのため、可能であれば国内の自転車旅行で、このテント泊地選定能力をある程度まで高めておくと安心かもしれません。日本だと道の駅がよく利用されてますが、それらは他国では見られないので、意識して使わないようにすると訓練になるかもしれません。ある程度慣れてくると、地図を見て地形や道路、町や村の密度からある程度は検討がつくようになります。現地走行中では人々の活動パターン(遊牧があるか、車か徒歩移動か等)や景色、町並みを見ると、自然と良さげな場所がわかりテント泊地の選定ができるようになります。
慣れないと、人によっては大分苦労し、暗くなると光が灯るカフェやレストランに吸い寄せられ、そこで閉店するまで居座り、閉店後は街をさまよい適当な場所で夜をやり過ごすのがあるようです。これでは体が休まらず、睡眠も十分でない状態になります。ある人はテント泊地が見つけられず毎日生きるか死ぬかのような必死な感じだったと述べてるくらいです。
始めのうちはどこにテントを張ればいいか分からない選定作業も自転車旅行を意識して進めている内に徐々に慣れてきます。選定するための大きな要素として人(治安、人口密度(訪問者や人工音含む))、自然物(地形、植生、気候)と人工物(キャンプ場、ガソリンスタンド、公園、宗教施設等)があり、これらの組み合わせで選定します。
一般に人が周辺に居ない場所でありながら、下地が整地されてる人跡のある場所や、反対に人がそれなりに居る道路沿いのガソリンスタンドや食堂がテント泊地に適する傾向があります。自然が残ってる場所では乾燥地帯を除き、植生の影響を受けて下地が適地でない所が多い気がします。そこら辺は、事前の情報収集でその地を通った自転車旅行者のブログなどが参考になりますので、事前に読み込んでおくことをお勧めします。
治安が悪い場所では寝込みを襲われるテント泊は避け、可能なだけ宿に泊まるようにします。宿がない場合は人目がある24時間営業のガソリンスタンドや整った広めの家の庭先に御願いをするとテントを張らしてもらえる場合が多いです。
それらがない場合は警察へ行き相談すると中庭や駐車場、場合によっては宿直室等を使わせてくれる場合もあります。難しい状況になるのが警察が協力的でなく、旅行者を歓迎しない国もあり、そのような場合はそのような状況にならないよう常に前もって対処する行動をとることが非常に重要になります。
以下、写真と共に実際のテント泊の例と解説です。欧米文化圏ではキャンプ場がいたるところにあり、自転車旅行ではよく利用しますが、今回は省いてます。
本来のテント泊とは違いますが、宿に泊まる予定で街中まで来て泊まれず、非常に困った状況の例です。 写真は町に着いたが高いホテルと外国人不可の宿だけで仕方なく公園泊。 テント泊が見つかると面倒になる場合は事前に別の場所で夕食を済ませておき、暗くなり、寝るときだけテントを張り、撤収も早めに行うと面倒になりにくいです。 (撮影地 イラン(写真後方チャドルを着て運動してるイランらしい朝の風景)) |
本来のテント泊とは違いますが、宿に泊まる予定で街中まで来て泊まれず、非常に困った状況の例です。 写真はそれなりの大きさの町に着いたが宿がなく、町の治安確認を兼ね警察署へ相談に行くと近くの公園が安全で、テント泊するのに問題ないと言われテント泊。 (撮影地 シリア、内戦前) |
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本来のテント泊とは違いますが、宿に泊まる予定で街中まで来て泊まれず、非常に困った状況の例です。 写真は宿がどこも満室でさんざん街中を走った後、宿主に御願いし屋上にテント泊させてもらう。 (撮影地 エジプト) |
人家が途切れない場合は村の中へ入って行きテントを張る許可を得てテントを張る。 自転車旅行者の中にはテント泊説明を分かり易くするため、テント泊の写真をプリントアウトして持ち歩いてる人もいる。 (撮影地 モザンビーク) |
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人口密度が高い場所では、治安やそこに住む人々が旅人やよそ者に対する態度により注意深さが違ってくる。 人口密度がある程度あっても上手く死角になる場所と日没を意識するとテントが張れる。 (撮影地 スイス) |
砂漠性の気候では一般に昼間に強風が吹き、夜には止むパターンが多い。 平坦に見える地でも数百メートルから数キロ離れると、道路からテントがかろうじて見えなくなる場合がある。 この写真のときは砂地ではなく所々出てる礫石を伝い道路から離れた。 (撮影地 スーダン) |
平坦な場所でも人工物でテントを隠せ、風をよけれる場合がある。 パイプライン埋設のための土盛りそば。 (撮影地 チリ) |
地形の変化では土砂採取地のように人口的なものもありテント泊地に利用できる。 このような凹地は遠くからは見つけにくい。 (撮影地 アゼルバイジャン) |
切通しの上部は人目に付きにくい。 (撮影地 フィンランド) |
地形によっては雄大な眺めがあり、自転車旅行の良さを感じさせてくれる。 (撮影地 米国) |
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広大な果樹園の端にテント泊。 (撮影地 イラン) |
ヨーロッパ、特に独、東欧、北欧では平地に多くの森がある。 定期的な伐採用の林道がよく発達しており、その奥へ行くと良いテント泊地がある。 (撮影地 ロシア) |
ヨーロッパでは自動車が通らないサイクリング道が整備されており、その周辺はテントを張りやすい。 (撮影地 フランス) |
道路の直線化で廃道となった場所もテントを張りやすい。 (撮影地 ギリシャ) |
堤防や海のそばは風が強い時が多く、テントを快適に張れる日は多くない。 (撮影地 アイルランド) |
日本の河川敷は公共地で護岸整備されてる場所が多いが、海外では私有地で自然のままのため、テントを張れない場合がある。 川のそばで一晩過すと、テントに結露することが多い。 (撮影地 チェコ) |
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道路下の横断暗渠の中は雰囲気は悪いが、強風の中や選択肢がない場合には非常に助かる。パタゴニアのように地域によってはよく利用されている。 (撮影地 米国) |
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宗教施設は敷地が広く許可を得てテントを張れる場合が多い。注意点として教会、モスク、寺の本体には泊まらないようにするべきで、モスクなどは空調付きで地元の人が寝てることはあるが、地元の人から誘われた場合は別とし、自分から中で泊まろうとするのは慎むべきだろう。 (撮影地 モザンビーク、教会) |
補給が容易でないエジプト西方砂漠の道路沿いにある救護施設。 このような設備は事前情報を得ておかないと分からないので事前調査が重要なになります。 (撮影地 エジプト) |
マウスの実験では寝不足が続くと脳が破壊されたままになると聞いたことがあり、実感としても健康には良くないと感じます。寝不足の旅だと、重要なその場を感じる感度も落ち、何の為に旅してるか分からなくなります。そうならずに旅を楽しむためにも、上記の例を参考に睡眠環境を確保するコツを修得すれば、余裕のある旅ができると思います。