この困難性への旅行者の状態を店主が勝手に大まかに分類し、区分けすると①初級チャレンジ②自転車旅行③上級チャレンジに分けられると思います。
以下、それぞれの解説と注意点です。
①の初級チャレンジは自転車旅行を始めたばかりで、完遂できるか不確かで不安に感じながらも挑戦心に溢れ、一定の困難性を克服しながら前進し、自転車旅行の醍醐味を存分に感じている時期だと思います。
これは特に若い人に自転車旅行を勧める代表的な自転車旅行の良さになりますが、注意点としてはこの一定の困難性を越えられるかどうかにあります。
この一定の困難性は近年のインターネットでの事前情報、自転車機材や道路の舗装化率向上等でそれ程高くなくなり、一定の体力、アウトドア能力、異文化対応能力等があれば比較的容易に超えられるようになりました※。しかし、一部の人にとっては超えられない場合があり、超えられない場合はかなりひどい状況に陥ってしまいます。
旅行全般に言えることですが、旅行だと生活の全てが移動状態に入ります。例えば部活動や受験勉強では生活は別途確保され、各課題に注力するだけで済みますが、旅行では生活を自分で維持しなければなりません。大抵は「なんとかなるだろう」と楽観視して出発しますが、上手くいかなければ生活自体が不安定になり、具体的には食事や睡眠が満足にとれない状態になります。
似たようなアウトドア活動の遠征登山だと、失敗、成功が比較的短期間で判明しますが、自転車旅行の場合、道を走っていくために人々の生活圏を通過します。そのため、上手く処理できてない状態でもそのままずるずると、なんとか続けられる場合が多いです。
そして、ずるずると食事や睡眠を満足に取れない状態が長く続くと、ちょうどブラック企業に勤めてるかのように疲労のため思考停止状態に近くなり、旅行をやめるべきかどうか、この旅行に意味はあるのかといったこと自体考えられなくなり、ただ移動する物体の様になり、肉体的にも精神的にもぼろぼろになります。
このような状態にならないためには自転車旅行に必要な旅の技術の各要素を把握する必要がありますが、不衛生に耐性があるか、異文化に対応できるか等、日本では十分に確認できない事柄もあり、それらは不確定要素になります。長くなりそうなので各要素の解説は次回のブログにします。
②の自転車旅行では①の初級チャレンジの一定の困難性を乗り越えた状態で、この先に事件事故等の不確定要素やアウトドア活動で自力走行の苦労はあるが、一般的なルートでの世界走破に困難性を感じず、単に移動手段が自転車になった旅行と感じられる状態です。
この状態になると、自転車旅行特有の一定の冒険性、挑戦性はあるものの、困難性云々ではなく「旅」として味わう割合が多くなり、初級チャレンジでは走破するだけで精一杯だったのが、余裕が出てきて興味の赴くまま、各人自分なりの自転車の旅を、予算や都合が許す限り楽しむことが可能です。
人によってはチャレンジするのが自転車旅行の楽しみとなれば次の③上級チャレンジへ移行しますが、①や③のチャレンジはどちらかと言うと体育会系で、②の旅は文化系・学術系の活動の要素が多くなるように感じます。
③の上級チャレンジでは主に標高差、無補給区間や未舗装区間の長さ、暑さ寒さが極端な場所での走破等、困難性への追求が目的になります。自転車の場合、基本的に道路やトレースをたどる事になり、自転車移動での困難性の追求は、自ずと限られた困難性になると思います。
困難性の追求で注意点としては治安が悪い国や地域へ入らないよう注意が必要です。治安が悪い国や地域で犯罪に巻き込まれないように目端を利かせたり、立ち居振る舞い、行動力で多少の違いは出るかもしれませんが、運まかせで、能力とは無関係の割合が大きく、そのような状況を自転車旅行の困難性やチャレンジとして意味があるのか疑問があります。
それと困難性の追求に意味が有るかどうか見極めるのは容易ではありませんが、全ての困難性がコントロールできる訳ではなく、泣きっ面に蜂の状況も多々あり、求道的な状況でなんらかの手段としていた困難性の追求が、困難性自体を目的として求めるようになった場合には注意が必要です。
以上が自転車旅行の困難性とそれに対する自転車旅行者の解説と注意点ですが、実際の自転車旅行では最初はチャレンジ要素が多い分①を抜けた時点で拍子抜けしたり自信に溢れたりしながら、自分なりの興味に沿った②の状態で自由に旅を続け、時々③の躍動感を織り交ぜて旅を楽しむのが一般的みたいです。
困難性が高く長期間かかる場合は手段が目的化しやすい。 そのような状況でも本来の目標を定期的に見直す事でおかしな間違いは防げる。 (撮影地 北極圏) |
※昔(恐らく20年?以上前)は上記①②③の区分けはなく自転車旅行自体が大変なチャレンジであったと思います。